ジャポニスム学会の毎年の活動は、年1回の総会(講演会併設)、年数回の例会と見学会、年1回の会報を中心としています。以下に最近のニュースと活動記録を掲載します。なお数年に一度、シンポジウムや連続講演会の開催、書籍の出版など特別の催しを行っております。
日時: | 12 月18 日(日)13:00―17:00 |
会場: | 京都国立近代美術館 1 階講堂 〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町 http://www.momak.go.jp/ |
参加費: | 無料 |
当日スケジュール
【研究発表会】 | 司会:橋本順光氏(大阪大学准教授) |
13:00 | 受付開始 |
13:15-13:50 | リンダ・ガルワーネ 氏(大阪大学院生) 「オペレッタ『ゲイシャ』のロシアにおける成功―ロシア版の特徴を中心に―」(質疑10分) |
13:50-14:25 | 山田晃子 氏(大阪大学院生) 「20世紀初頭のイギリスにおけるファッションのジャポニスム―1900 年‐1916 年のQueenを中心に―」(質疑10分) |
14:25-14:35 休憩 | |
14:35-15:50 | 宮崎克己氏(美術史家・ジャポニスム学会監事) 「グラフィック・イメージの東西環流~北斎、ボッティチェルリ、ミュシャ、夢二・・・」(質疑応答15分) |
【見学会】 | (会員対象) |
16:00-17:00 | 「川西英コレクション収蔵記念展 夢二とともに」 自由見学・自由解散 |
[発表要旨] リンダ・ガルワーネ氏 「オペレッタ『ゲイシャ』のロシアにおける成功―ロシア版の特徴を中心に―」 ロシアのジャポニスムはヨーロッパからの影響で起こり、ヨーロッパから日本をテーマ とする作品が輸入され、人気になったと言われている。シドニー・ジョーンズのオペレッ タ『ゲイシャ』(1896)のロシアにおける成功も一般的にヨーロッパで流行したジャポニス ムの結果と見なされている。確かに、エキゾチズムの対象としての日本への興味は『ゲイ シャ』が高く評価された大きな原因であった。しかし、『ゲイシャ』は1897 年に初演し、 1950 年代までも上演され続けたことを考えると、ロシア語に繰り返し改作されたり、登場 人物のセリフに当時 の最新情報を挿入したりして新趣向を盛り込んだことがむしろ、この オペレッタの成功の原因であったと思われる。本発表では、様々な『ゲイシャ』のロシア 語訳や上演記録を考察することで、ロシアにおける『ゲイシャ』の特徴やロシアの日本人 表象におけるその重要性を明かにする。 山田晃子氏 「20世紀初頭のイギリスにおけるファッションのジャポニスム―1900 年‐1916 年のQueen を中心に―」 本発表の主眼は、当時のイギリスの女性向け新聞であるQueen の記事を分析することで、 20 世紀初頭のイギリスのファッションにおける日本の着物の影響について明らかにするこ とである。イギリスでのジャポニスムファッションの流行には、フランスからの影響が大 きかったことは疑いない。しかし、イギリスでもリバティやハロッズをはじめとする同地 の百貨店がそれぞれ独自にデザインし、中には日本と直接の交渉を持っていたところもあ った。そして、そのように製作されたドレスなどは、フランスに劣らぬ勢いで、イギリス の女性の間でも広く流通していたことがうかがえる。本発表では、これらのドレスについ て、時期を追ってのデザインの変容とともに、武術など同時期に流行した他の日本文化と の関わりにおいてどのように位置づけることができるのかを、図像を中心として考察した い。 宮崎克己氏 「グラフィック・イメージの東西環流~北斎、ボッティチェルリ、ミュシャ、夢二・・・」 1890 年代のフランス、イギリス、ドイツでは、ポスター、版画、雑誌、イラスト、絵はが き、マンガ、装幀など、新しい形態のグラフィック・アートがいっせいに開花した。そこ では中世、ビザンチン、ルネッサンスなど西洋の伝統的イメージだけでなく、外国、とり わけ日本のイメージが大量に流れ込み、融合して新しいものをつくりだしていた。 こうしたグラフィック・イメージの革新は、1900 年以後日本にも波及し、従来の浮世絵的 画像が一新する。この講演では、少女像、カキツバタ、夜空など、大流行したいくつかの イメージの源泉とその伝播に注目し、それらが短期間に世界を環流したさまを明らかにす る。
■第32回(2011年度)ジャポニスム学会賞が決定しました。NEW!! ジャポニスム学会理事会では、去る9月に学会審査担当理事による本年度学会賞の審議を行い、同月理事会にて第32回(2011年度)ジャポニスム学会賞を下記の業績に対して贈ることに決定いたしました。
受 賞 者 | : | マヌエラ・モスカティエッロ 氏 | |
対象業績 | : | 『ジョゼッペ・デ・ニッティスのジャポニスム、) | |
19世紀末のフランスで活躍したイタリア人画家』 (仏文)Le Japonisme de Giuseppe De Nittis, Un peintre italien en France a la fin du XIXe siecle, Peter Lang, Bern, 2011 |
受賞者略歴 1974年、ナポリ(イタリア)生まれ。 現在、ボローニャ極東美術研究センターおよびボローニャ大学の共同研究員。 2005年 日本女子大学で行われた国際シンポジウム「林忠正 – ジャポニスムと文化交流への貢献」のパネリストとして、「19世紀末のパリで活躍したイタリア人画家たちと林忠正」について発表。 2007年 パリ第4大学とボローニャ大学の共同プログラムにおいて、今回受賞作のもととなった博士論文を提出し、優秀な成績で博士号を取得。 2007 – 11年 ボローニャ大学修士課程で「ジャポニスム:19世紀欧米の画家たちに対する日本の影響」と題する講義を担当。 主要著書・論文: 2010年:プチパレ美術館(パリ)で開催された展覧会の図録『ジョゼッペ・デ・ニッティス – 優雅なモデルニテの画家』に論文「日本の美神と結ばれて」を寄稿。 2011年:『ジョゼッペ・デ・ニッティスのジャポニスム、19世紀末のフランスで活躍したイタリア人画家』(今回の受賞作)をピーター・ラング社より刊行。 授賞理由 本研究は、19世紀後半のパリの社交界で華々しい活躍をしたものの、早世したために長い間忘れられた画家となっていた、イタリア人ジョゼッペ・デ・ニッティスのジャポニスムを詳細に論じたものである。彼はドガやエドモン・ド・ゴンクールと親しく、自身日本美術のコレクターであり、またその作品に日本美術の表現方法を応用した。彼の邸宅は日本の美術品で飾られていたと伝えられるが、ほとんど散逸してその痕跡はなくなっている。彼はイタリアとフランスにまたがって、多くの文学者、美術批評家や画家らと交流を持ち、時代の流行をリードした画家であった。 しかし、ジャポニスムの画家として、コレクターとして、デ・ニッティスを論じた研究は先例がなく、モスカティエッロ氏は多くの作品を発掘し、書簡など今までほとんど使用されていなかった一次資料を駆使し、また閲覧すべき的確な資料に当たって、詳細にそのジャポニスムの特徴を分析した。このような点において本書はオリジナリティに富み、膨大な資料渉猟と調査の成果を示している。 本書の構成は時代背景の説明から、次第にデ゙・ニッティスのジャポニスムへと進んでいる点で、わかりやすく明晰である。この画家がパリにおいてその洗礼を受けたことは確かであり、氏は扇面、自然表現、金銀泥を思わせる画面形式、画材の扱いに日本美術を学んだ痕跡を発見し、具体的な作品を例に挙げて日本の表現と比較し、説得力ある論証を展開している。 日本との接点に関しては、とくに渡辺省亭の席画との出会いは重要であり、全く新しい指摘というわけではないが、その即興性や水墨ふうの筆触に対する詳細な検討は重要である。また、当時流行していた「袱紗」は多くの画家の絵の中に表れるが、デ・ニッティスはこれを多く所持しイメージ・ソースとして利用していたことを指摘したことも意義のあるものであった。 彼は自身のコレクションのみならず、他のコレクターの所蔵作品や出版物も参照したと考えられるが、このような資料にも丁寧にあたって、きわめて実証的に参照可能だった例を挙げている。このような手堅い手法は、ナポリ時代からの友人との交友を、資料を用いてよみがえらせたり、邸宅の様子を写真や文献を用いて復元するやり方にも表れている。 全体に、パリで流行作家として、また女性風俗画家として名をはせていたジョゼッペ・デ・ニッティスが日本美術の多様な側面を発見してそれを自らの絵画に応用した軌跡が、丁寧に叙述されている、今後も長く利用される基礎的な研究であり、「ジャポニスム学会賞」の対象業績としてふさわしいものである。 授賞式・記念講演会 2012年2月に開催予定の総会にあわせて行います。詳細は追ってご連絡いたします。
■2011年度第4回例会を開催致しました。 畠山公開シンポジウム 「西洋における中国/日本 ― 17~19世紀のシノワズリーとジャポニスム ―」
主 催: | ジャポニスム学会 |
共 催: | 公益財団法人畠山文化財団 |
日 時: | 2011年11月5日(土)10時15分 ~ 16時30分 |
会 場: | 根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)B1F 講堂 (http://www.nezu-muse.or.jp/) |
参加対象: | 一般公開(会員入場無料、非会員1000円、非会員学生500円) お申込みは学会ホームページ連絡先よりお願い致します。 |
募集・参加方法: | 10月31日までにメールまたはFAXにて学会事務局にお申し込みください。 参加証を発行します。先着順。 |
備 考: | 17時15分より、近在の別会場で懇親会(会費制)を行いますので、奮ってご参加ください。 |
プログラム
午前の部 | |
開会の辞・挨拶 | 岡部昌幸(ジャポニスム学会理事長、帝京大学教授) 西田宏子(根津美術館副館長) |
基調講演 | 「エグゾティスムとしてのシノワズリーとジャポニスム」 坂本満(ジャポニスム学会会長) |
基調講演 | 「異国趣味、14~19世紀のヨーロッパのシノワズリー」 フランチェスコ・モレーナ(フィレンツェ美術館所轄文化財監督局) |
午後の部 | |
「東洋風小部屋の装飾と『漆(japan)』」 日高薫(国立歴史民俗博物館教授) | |
「ドイツ王侯による肥前磁器収集と陳列室の意匠」 桜庭美咲(国立歴史民俗博物館 機関研究員) | |
「1940年代の曙光 ‐日本におけるシノワズリ―/ ジャポニスム研究史から」 岡部昌幸 |
シンポジウムフォーラム 「シノワズリーとジャポニスムのはざまで」 | ||
コメンテーター: | 宮崎克己 (美術史家) | |
水田至摩子(畠山記念館学芸課長) | ||
司 会: | 藤原貞朗 (茨城大学准教授) |
開催趣旨
17~18世紀の西欧において、東洋美術の影響を受けた美術工芸が多数出現しました。 それらは「シノワズリー」と総称されていますが、じつは、中国からだけでなく 日本からの影響が混在しています。プレ・ジャポニスムというべきシノワズリーの 時代、いかなる日本の美術品がどのように愛好されたのでしょう。それは19世紀の ジャポニスムと関連しているのでしょうか。こうした問いかけを軸に、西洋における 中国/日本を総合的に捉え直し、日本や中国の影響が世界的規模となった今日の 国際交流の意味を問い直します。
■2011年度第1回例会を行いました。 見学会「株式会社大倉陶園」☆本例会は学会員対象です。 (本例会は東日本大震災のため延期になっておりましたが、再企画されました) 主催: ジャポニスム学会 協力: 株式会社大倉陶園 会場: 株式会社大倉陶園 〒245-0052 神奈川県横浜市戸塚区秋葉町20番地 日時: 2011年9月27日(火)15時~17時頃 14時30分 JR東戸塚駅東口エレベーター下に集合 定員: 20名 募集・参加方法: (☆本例会は学会員対象です) 学会員の方は、9月15日までにメールまたはFAXにて学会事務局にお申し込みください。参加証を発行します。先着順。 開催趣旨: 株式会社大倉陶園は、「良きが上にも良きものを」という大倉孫兵衛・和親父子の理念のもと1919年に創業された、硬質磁器の白さや手描き絵付、岡染めや蒔絵付という特徴ある技法を長く伝えてきている日本の洋食器メーカーです。 本社工場にて精密機器に似た製造過程を、展示室にて手描き作品等を見学します。参考資料 (pdf)
■2011年度第3回例会を開催いたしました。 【研究発表会】
日時: | 2011年7月9日(土)14:30開始 |
場所: | お茶の水女子大学・大学本館・1階・第5講義室(128室) http://www.ocha.ac.jp/access/index.html 〒112-8610 東京都文京区大塚 2-1-1 Tel. 03-3943-3151 |
交通: | 東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅より徒歩7分 (当日は正門よりお入りください) |
参加費: | 無料 |
当日スケジュール: | |
14:15 | 受付開始 |
14:30-15:30 | 南明日香氏(相模女子大学) 「ジョルジュ・ド・トレッサン(1877-1914)にみる20世紀初頭の日本美術研究の諸相」 (15分 質疑応答) |
15:45-16:45 | 藤原貞朗氏(茨城大学) 「アンリ・フォシヨンとポスト・ジャポニスムの美学」 (15分 質疑応答) |
17:00 | 終了 |
■2011年度第2回例会を開催いたしました。☆本例会は学会員対象です。 【見学会】「もてなす悦び―ジャポニスムのうつわで愉しむお茶会―」展
日時: | 6月25日(土)午後3時30分 |
会場: | 三菱一号館美術館 http://mimt.jp/ |
交通: | 東京メトロ千代田線「二重橋前」駅(1番出口)から徒歩3分 JR「東京」駅(丸の内南口)・JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)から徒歩5分 |
当日スケジュール: | |
15:30 | 集合(美術館裏手、一号館広場側入口前) (美術館には正面入口と、丸の内ブリックスクエア一号館広場側入口の2箇所の入口がありますので、ご注意ください。) |
15:40-16:10 | (館長応接室) 発表「もてなす悦び展について」 岡部昌幸氏 |
16:15-18:00 | 館内にて展覧会自由見学(当日の閉館は午後6時です。) |
~三菱一号館美術館 「もてなす悦び―ジャポニスムのうつわで愉しむお茶会―」展について~ 開催趣旨: ジャポニスムの流れの中で、イギリスやアメリカ合衆国などで作り出された美しい日常的な品々―陶磁器や銀器、ガラス作品や服飾品―が、どのようにして人々の暮らしに深く入り込み、人生を豊かに彩っていったかを探ろうとする本展の開催に際し、コレクションの紹介者であり、展覧会の学術協力者でもある発表者が、コレクションと展覧会の背景とコンセプトを簡潔に紹介します。 詳しい展覧会内容は三菱一号館美術館ホームページへ
■2011年総会を行いました。 案内状(pdf) 正会員の方は、2011年2月11日までに出欠票(欠席時は委任状、詳細は上記案内状(pdf)参照)をお送りください(連絡先)。 (準会員、学生会員、賛助会員の方も、オブザーバーとして総会に参加してい ただけます)。 総会終了後、第31回学会賞受賞者の柴田依子氏の記念講演、および芳賀徹先生の特別講演が行われました。
日時: | 2011年02月19日(土)13時-17時 |
場所: | 東京大学駒場キャンパス18 号館ホール http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_17_j.html |
当日スケジュール: | |
12:30 | 総会受付開始 |
13:00~13:40 | 総会 |
議事: 1)2010 年度事業報告 2)2010 年度決算報告・監査報告 3)2011 年度事業計画案審議 4)2011 年度予算案審議 5) その他 | |
(休憩) | |
14:00~15:00 | 第31回学会賞受賞記念講演 柴田依子氏 「ポール=ルイ・クーシューの生涯と俳句のジャポニスム」(仮題) |
(休憩) | |
15:15~16:15 | 特別講演 芳賀徹氏 「文学とジャポニスム」(仮題) |
16:30 | 閉会 |