ジャポニスム学会の毎年の活動は、年1回の総会(講演会同時開催)、年数回の例会と見学会、年1回の会報を中心としています。2013年秋には、公益財団法人畠山文化財団との共催でシンポジウム「水墨のジャポニスム― 越境する書と画」を開催しました。
■ジャポニスム学会11月例会(関西例会)を開催しました。
以下のとおり、例会が開催されますので、ふるってご参加下さい。参加ご希望の方は、当日
講堂受付に直接、お越しください。なお、会場の都合により、100名の定員で締め切らせて
いただきます(今回の例会は参加証の発行はございません)。
日時:2013年11月9日(土)
13:00より受付開始
会場:京都国立近代美術館1階講堂(チケットなしでご入場いただけます)
http://www.momak.go.jp/
研究発表:
13:30-13:55
前崎信也会員(立命館グローバル・イノベーション研究機構専門研究員)
「明治期における竹工芸の輸出について ―ハンブルグ美術工芸博物館所蔵作品を中心に―」
14:10-14:35
高橋麻帆会員(田村書店、京都大学博士)
「ジャポニスムの里帰りとしての「ヌーボー式」と「セセッション式」及び「マルホフ式」― アール・ヌーヴォーから分離派、ウィーン工房へ-」
14:45-15:15
ディスカッサントとの質疑応答
ディスカッサント 池田祐子会員(京都国立近代美術館)
司会 橋本順光会員(大阪大学文学研究科)
15:15-15:35
全体討議
※ 当日の会場では「皇室の名品-近代日本美術の粋」展(単館開催)と、お向かいの京都市美術館では
「竹内栖鳳-近代日本画の巨人」展(京都展のみの作品出展予定)が開催されます(ご観覧の際には入場
券のご購入が必要になります)。
■ 発表要旨
「明治期における竹工芸の輸出について ―ハンブルグ美術工芸博物館所蔵作品を中心に―」
前崎信也会員(立命館グローバル・イノベーション研究機構専門研究員)
日本における竹を素材に用いた工芸作品は、縄文の籃胎漆器に端を発するとされており、現代まで時代を問わず造り続けられてきた。中でも唐物写しの花籃は、近世末期から近代にかけて流行した文人文化の中で珍重され、その技術は本歌を凌ぐ程に成熟したとされている。そして、明治維新により外国貿易の門戸が広がると、陶磁器や金属器、漆器と同様に竹工芸も盛んに輸出され、欧米諸国で人気を博した。明治初期に来日し美術工芸の調査を行ったクリストファー・ドレッサー(1834-1904)はその著書Japan: its architecture, art, and art manufactures の中で “The Japanese are the best basket-makers in the world, and they alone have raised the manufacture to an art industry” と述べている。彼の竹工芸に対する高い評価を裏付けるかのように、欧米の数多くの美術館・博物館が日本の竹工芸作品を所蔵しているが、その実態はこれまであまり知られてこなかった。 発表者は2011年と2012年に延べ2週間をかけて、ハンブルグ美術工芸博物館所蔵の竹工芸作品約200点のデジタル化を行った。本コレクションは主に1870年代初頭から1900年代後半迄に蒐集され、大阪の初代早川尚古斎(1815-1897)の作品を多く含むなど、質・量ともにヨーロッパ有数の竹工芸コレクションである。本発表では本コレクションの内容、蒐集された背景を中心に、明治期における日本の竹工芸の輸出と海外での受容について述べる。 |
「ジャポニスムの里帰りとしての「ヌーボー式」と「セセッション式」及び「マルホフ式」
― アール・ヌーヴォーから分離派、ウィーン工房へ-」
高橋麻帆会員(田村書店、京都大学博士)
明治後期から昭和初期にかけて、日本の庶民の生活が和風から洋風に変化しようとしていた際、ウィーン分離派やウィーン工房、さらにダルムシュタット芸術家コロニーといったドイツ語圏の芸術運動が少なからぬ影響力を持っていた。1900年頃には、パリから到来した「アール・ヌーボー式」が流行していたが、それはすぐに日本人の感覚には合わないものとして批判されるようになる。対照的にもてはやされたのが、「セセッション式」や「マルホフ式」と呼ばれた上記のドイツ語圏風の様式であるが、それらの様式はあまりに流行して一般層にまで広まったために、「西洋式」や「前衛」の意味でも多用され日本独自の様式に発展してしまい、今日振り返ってその定義を試みることが非常に困難なほどである。 オーストリアやドイツの様式を日本の様式に取り入れようと先頭に立っていたのは武田五一や伊東忠太ら建築家たちであった。彼らには、それらの本場の様式はそもそも19世紀の西洋におけるジャポニスムの影響下に生み出されたものなのだから日本のデザインにも適合するという確信があった。さらに彼らはジャポニスムの里帰りを喧伝することで、新しい西洋風の様式を広めようとしていた。本発表では、まず彼らの政治的な意図を言説の中に確認した上で、当時の日本における西洋の様式受容がフランスからドイツ語圏に代わっていく様を追いたい。 |
(要事前申込み、一般公開)
第3回 畠山公開シンポジウム「水墨のジャポニスム―越境する書と画」 主催:ジャポニスム学会 共催:公益財団法人 畠山文化財団 協力:帝京大学、公益財団法人 畠山記念館、株式会社 荏原製作所 会場:帝京大学 霞ヶ関キャンパス、畠山記念館(見学会) 日程: 2013年10月18日(金)、19日(土) |
趣旨:
近年、日本中世・近世の墨跡や水墨画が、欧米の研究者・収集家のあいだで注目されており、 それとともに現代の書、水墨画も熱い視線を浴びるようになった。またふりかえってみるに、 ジャポニスムが盛り上がっていた19世紀後半の西洋においても、浮世絵、琳派、蒔絵など 色彩豊かで装飾的なものだけでなく、日本の筆遣いやモノクロームの表現に魅せられた者 たちが存在していた。
西洋では、日本・東洋文化のもっとも奥深い部分をなす水墨をどのように理解してきたのか、 それらからどのような影響を受けてきたのか、ここではどのようなコレクションが形成 されたのか...、このシンポジウムでは、このジャポニスムの隠れたもう一つの系譜について 探ってみたい。
パネリストとして、国内・海外で活躍する現代の書家と日本画家、言葉と造形の両面から 西洋における水墨の受容を考える美術史家・文化史家が、それぞれの立場から発表し、 意見をかわす。またワークショップでは、若手のジャポニスム研究者たちが、 このテーマを自分の問題意識からとらえなおし、ディスカッションを行なう。
畠山記念館では、「書の美―和歌のこころ・禅のこころ―」展を開催しており、 その見学会もシンポジウムの一環として組みこまれる。また関連事業として、 帝京大学美術史演習によるワークショップも開催される。
ジャポニスム学会が企画運営し、公益財団法人畠山文化財団が資金・運営の バックアップをする畠山公開シンポジウムは、一昨年の「西洋における中国/ 日本――17~19世紀のシノワズリーとジャポニスム」、昨年の「アメリカの ジャポニスム――日米文化交流の歩みと知られざる偉人・執行弘道」を受け、 今回が3回目となる。毎回、シンポジウムの成果は報告書としてジャポニスム学会より刊行され、 ジャポニスム研究の貴重な蓄積となっている。
プログラム: |
10月18日(金) |
【シンポジウム関連事業】 |
9:30-11:30 | 「水墨の技法と表現を愉しむ」帝京大学美術史演習によるワークショップ (東京永田町、帝京大学霞ヶ関キャンパス) |
【第1セッション 見学会】 |
13:00-14:30 | 畠山記念館「書の美―和歌のこころ・禅のこころ―」展見学会 ( 東京白金台、畠山記念館) |
【第2セッション ワークショップ】 |
15:30-17:30 | 若手研究者によるワークショップ(東京永田町、帝京大学霞ヶ関キャンパス) 「版と墨の変容-暁斎とヤンセン」小林優(足立区立郷土博物館専門員) 「高島北海の席上画とその筆致」鵜飼敦子(東京大学東洋文化研究所特任研究員) 「ジョージア・オキーフと水墨画」玉井貴子(早稲田大学大学院博士後期課程) |
10月19日(土) |
【第3セッション 水墨の現在】 |
9:30 | 開場(東京永田町、帝京大学 霞ヶ関キャンパス) | |
10:00-10:10 | 開会のあいさつ 馬渕明子(国立西洋美術館館長・ジャポニスム学会会長) | |
10:10-10:15 | 共催のあいさつ 長田憲幸(公益財団法人畠山文化財団常務理事) | |
10:15-11:00 | 「水墨のジャポニスム・概観」宮崎克己(美術史家・ジャポニスム学会理事長) | |
11:00-11:40 | 「現代書家の眼から」菊山武士(書家) | |
11:40-12:20 | 「水墨画は可能か?」三瀬夏之介(日本画家) |
【第4セッション 受容の軌跡】 |
14:00-14:30 | 「欧米美術館における水墨画コレクション」板倉聖哲(東京大学 教授) | |
14:30-15:00 | 「欧米における書の理解」水田至摩子(畠山記念館 学芸課長) | |
15:00-15:30 | 「西洋における水墨画の受容」南明日香(相模女子大学 教授) |
【第5セッション 総合】 |
15:45-17:00 | 共同討議「水墨の交流とその未来」 | |
17:00-17:15 | 閉会のあいさつ 岡部昌幸(帝京大学教授) | |
17:30-19:30 | 懇親会 |
参加申込方法
下記ジャポニスム学会事務局(連絡先)まで、参加申し込みをメールあるいはファックスでお送りください。なお、①10月18日(金)、②19日(土)、③19日懇親会のいずれに参加を希望するか、明記してください。折り返し参加証をお送りします。定員(100名)になり次第、締め切らせていただきます。
申込期間:10月1日(火)~10月15日(火)
※ジャポニスム学会員の申込期間を9月1日(日)から10月15日(火)までとさせていただきます。
メール:japonisme@world-meeting.co.jp
FAX:03-3341-1830
シンポジウム参加費(資料代):500円
懇親会参加費:2000円(いずれも当日受付にて頂きます)
■ジャポニスム学会7月例会(要事前申込み、一般公開)を 開催しました。(申込み〆切:7月10日)
研究発表、解説ならびに見学会による例会を自由学園明日館にて開催いたしました。
日時:7月20日(土)
14:00より受付開始
会場:自由学園明日館大教室としま
〒171-0021 豊島区西池袋2-31-3
電話番号: 03-3971-7535
http://www.jiyu.jp/kanren/contact.html
交通:JR池袋メトロポリタン口より徒歩5分
JR目白駅より徒歩7分
研究発表:
14:15-15:15
清水恵美子(お茶の水女子大学)「戦間期の日米美術交流―米国で開かれた日本画展覧会」
解説:
15:15-15:45
大久保美春(比較文化研究者)「フランク・ロイド・ライトと日本、そして自由学園明日館」
当日は10:00-17:00の間、随時、フランク・ロイド・ライト設計の 明日館を見学することができます。
参加費:500円(当日、研究発表会場受付にてお支払いください)
定員:35名
参加ご希望の方は、7月10日(水)までにジャポニスム学会事務局 (Fax: 03-3341-1830, E-mail: japonisme@world-meeting.co.jp)宛てに、 お名前、ご住所、お電話番号、FAX番号、メールアドレスを記載のうえ、 FAXまたはメールにて参加をお申し込みください。
参加申し込みをされた方には参加証を発行いたしますので、 当日は見学施設ならびに研究発表会場入り口にて参加証をご提示ください。
なお、会場の都合により、定員になり次第、締め切らせていただきます。
■2013年度総会と学会賞受賞記念講演会を開催しました。
日時: | 2013年02月16日(土)13時~16時30分 |
場所: | 帝京大学 霞ヶ関キャンパス 教室4・5 |
総会 | 議案 1)2012 年度事業報告 2)2012 年度決算報告・監査報告 3)2013 年度事業計画案審議 4)2013 年度予算案審議 5) その他 |
第33回学会賞授賞式、および、記念講演会 今井朋 氏 「19世紀末の日本美術蒐集家の眼差し ナンシー市立美術館所蔵シャルル・カルティエ=ブレッソン・コレクション 」 |