ジャポニスムとは、パリを中心に発達した近代美術にみられる日本文化への関心やその影響として一般的に知られている。ジャポニスム学会は、1979年に東京で組織された会合に端を発しており、それが翌1980年にこの領域の解明に特化した学会として船出した。なお当初「ジャポネズリー研究学会」と称したが、1998年に現行の名称に改めた。

近年、ジャポニスムに対する認識は世界的に広がり、美術史の分野だけでなく、文学、音楽、舞台芸術、園芸、映画、博覧会、コレクション研究など様々な文化形態の研究が進んでいる。西洋大都市に起きた日本流行がユーラシアやアメリカ大陸に拡散していった経緯も明らかになってきた。また、欧米の日本趣味を方向付けた人々は、西洋の男性芸術家だけでなく、女性や美術商や日本人など、ジェンダーや職業や国籍も多様な人々であったことも明らかになってきた。さらに、日本が、西欧における日本消費にどのように対応し、その受容にどのような反応をしてきたかの研究もすすんでいる。ジャポニスムとは、西洋がみた他者としての「日本」と西洋を意識して発信した「日本」が接触・交渉し現われた日本表象であったということができる。

ジャポニスム研究は、越境性の高い学際的分野として展開してきた。ジャポニスム学会の260名の会員の研究分野を見渡すと、美術史だけでなく、文学、音楽、建築、思想、外交史、産業史、日本史、国際日本研究(日本学)、博物館学など多様だ。さらに各研究者の専門地域と時代が掛け合わされる。ジャポニスム研究は、これらの特徴から、方法論の体系化を目指すのではなく、国内外の多様な専門家が解明すべき問題を共有して取り組む学問の領域といえるだろう。ジャポニスム学会は、そのような研究者コミュニティーの構築を目指して、公益財団法人石橋財団の支援をうけて日英バイリンガルの学会誌を刊行するとともに、公益財団法人 荏原 畠山記念文化財団との共催による日英バイリンガルの国際シンポジウムを年一回開催している。

今日、ジャポニスムという言葉は、日常生活を取り囲む衣食住やポピュラー文化の様々な側面でつかわれるようになっている。ジャポニスムを考えることは、現代文化における日本の存在を考えることにつながっている。我々は、広い視野で文化交流を見つめること、研究の楽しさを多くの人々と分かち合うことを忘れることなく、常に多方面に問題提起をできるような、活発な学会となるよう、尽力したい。

ジャポニスム学会理事会
2022年4月

 

役員リスト

 

会長・理事 宮崎 克己
名誉会長 高階 秀爾
顧問 坂本 満
馬渕   明子
理事長 石井   元章
理事 田中   厚子 (事務局長)
池田    祐子
井戸 桂子
井上 瞳
鵜飼   敦子
岸 佑
木田  拓也
粂   和沙
トゥーレン サスキア
橋本 順光
監事 人見   伸子
高木   陽子
委嘱委員
岡部 昌幸
隠岐 由紀子
実行委員 江本   弘
濱島   広大
藤井   美優
シュ イ

(2023年6月29日現在)

「ジャポニスム学会理事会運営のための内規」(pdf)