2022年度 関西例会 開催要項 「若手ラボとの共催による研究発表会」

日時:12月17日(土)13時30分~16時45分[受付開始:13時]
会場:京都国立近代美術館1階講堂
https://www.momak.go.jp/Japanese/guide/hoursAdmission.html#access

テーマ:演劇とジャポニスム
主旨:これまで関西例会は、主として展覧会や関係機関の視察を行ってきました。しかし、会員、特に若手に研究発表の場を提供し、質疑応答を通して研究を深めていくことも学会にとって重要な使命です。そのため今回は、現在サスキア・トゥーレンさんが中心となって運営されている「若手ラボ」と協力し、若手研究者二人による発表を行います。

プログラム
13:30~13:40  挨拶・主旨説明
13:40~14:40  発表①+コメント
14:40~14:45  休憩
14:45~15:45    発表②+コメント
15:45~16:00  休憩
16:00~16:40  質疑応答+討議
16:40~16:45  挨拶

司会・進行:池田祐子(例会担当理事/京都国立近代美術館副館長・学芸課長)
サスキア・トゥーレン(若手ラボ主宰/文化学園大学助教)

コメンテーター:馬渕明子(ジャポニスム学会顧問)

発表者 ①:藤井美優[早稲田大学大学院博士後期課程]
題目:アルベール・ドゥスドゥベ訳『忠臣蔵あるいは日本の復讐劇』(1886) 掲載の挿絵と河鍋暁斎の関係について
概要:1886年にパリで刊行された『忠臣蔵あるいは日本の復讐劇』(Tchou-Chin-Goura ou une vengeance japonaise 以下、本書) は、イギリスの日本文学研究者フレデリック・ディキンズ (Frederick Victor DICKINS, 1838-1915) によって刊行された英語版『仮名手本忠臣蔵』を原本として、アルベール・ドゥスドゥベ (Albert DOUSDEBÈS, 生没年不明) がフランス語に訳した文献である。そのため、ディキンズ研究において英語版『仮名手本忠臣蔵』に関する研究は多数認められる。しかし、これらの先行研究では本書への言及はなくディキンズ自身の経歴や英語版の内容解釈にとどまり、英語版と本書に共通する29点の挿絵に関する考察は不十分であると言える。
本発表では、まず19世紀後半のフランスにおける「忠臣蔵」の受容概要について述べたのちに、本書を概観した上で挿絵29点のうち3点が国芳門人 歌川芳盛 (1830/天保元-1885/明治18) によるものであることを指摘する。次に本書に「忠臣蔵」の挿絵と共に掲載された能「高砂」を主題とする挿絵《播州高砂ノ浦》に関して、「高砂」の図像分類と弟子ジョサイア・コンドル旧蔵の《日の出に鶴亀》との様式上の比較を行う。そして最後に芳盛との関係や当時能狂言を描く絵師として評価されていた点も踏まえて、《播州高砂ノ浦》を河鍋暁斎 (1831/天保2-1889/明治22) が担当していた可能性を検討する。

発表者 ②:柏木純子[大阪大学大学院博士後期課程]
題目:舞台衣装に表現される夢の/現実の日本像―フェリックス・レガメ《『蝶々夫人』のための舞台衣装デザイン》(1906)を中心に
概要:本発表では、国立西洋美術館が2019年に収蔵したフェリックス・レガメ作《『蝶々夫人』のための舞台衣装デザイン》(1906、計28点)を軸に、西洋の劇作品において和装がどのような意図と共に用いられたのかを考察する。
1904年にミラノのスカラ座で初演されたオペラ『蝶々夫人』は日本を題材とする舞台作品として名高い。こんにちに至るまで、世界中で演出、翻案が繰り返され、物語や登場人物が抱える悲劇性に関し多角的な解釈が提示されてきた。実のところ、作曲家ジャコモ・プッチーニが創作に携わった初期の上演から、作品の再解釈の歴史は始まっている。ミラノでの初演が不評のうちに幕を閉じ、ブレシアで改訂版を上演した。その後、欧米を巡演しながら修正を繰り返し、1906年にオペラ・コミック座で創作したフランス初演を決定版とした。
《『蝶々夫人』のための舞台衣装デザイン》は、この決定版のために日本研究家のフェリックス・レガメが描いたものである。レガメは来日経験があり、当時の日本研究家の中でも着物文化に造詣が深く、彼の知識がこのデザイン画の随所に反映されている。一方で、日常的な和装を写実的に再現するのではなく、作品内容に合わせて再解釈したと思われる点もある。上演に使用された楽譜や演出ノート、フランス演劇界における日本文化受容の潮流を鑑みながら、レガメがオペラ『蝶々夫人』において何を提示しようとしたのかを考察する。

参加申込締切:1210日(土)[定員80名:先着順]。申込はジャポニスム学会事務局連絡先japonisme@world-meeting.co.jp(ワールド・ミーティング内)まで。