ジャポニスム入門
ジャポニスム学会編 思文閣出版
2000年11月
ISBN 4-7842-1053-9
2,800円
本文247頁、資料33頁
21X15cm
「編集後記」より
1998年に学会名を現在のものに改めると同時に、学会創立20周年記念事業として今回の『ジャポニスム入門』の企画が立てられた。これは大学や生涯学習の場などで〔ジャポニスムについて〕一般の関心が高まってきているのに、いまだに懇切丁寧な入門書がないことへの反省から立案されたものである。幸い学会員は増え、地域的にも分野においても多様な研究者が揃ってきていた。
この本の構成は、基本的には地域別の章立てがしてあり、その中で絵画、彫刻、工芸、素描、版画など、狭い概念での美術のジャポニスムについて述べられているが、それ以外に広くアートとして認められる写真、モード、建築、さらには音楽にまで裾野を広げ各章をあてている。
序・ジャポニスムとは何か | 高階秀爾 |
1 | |
日本美術の海外流出―ジャポニスムの種子はどのように蒔かれたのか― | 小林利延 |
フランス・一八九〇年以前―絵画と工芸の革新― | 三浦 篤 |
フランス・一八九〇年以降―装飾の時代― | 宮崎克己 |
イギリス―ゴシック・リヴァイヴァルから日本風庭園まで― | 渡辺俊夫 |
アメリカ―東回りとフェミニズムのジャポニスム― | 岡部昌幸 |
オランダ―出島の国のジャポニスム― | 圀府寺 司 |
ベルギー―前衛芸術とジャポニスム― | 高木陽子 |
ドイツ―ユーゲントシュティールのグラフィックと工芸― | 桑原節子 |
オーストリア―綜合的ジャポニスムの一例― | 馬渕明子 |
イタリア―その特異例と原因― | 近藤映子 |
北欧―スウェーデン、フィンランドを中心に― | 荒屋鋪 透 |
中央ヨーロッパとロシア―チェコ、ポーランド、ハンガリーとロシアの場合― | 遠藤 望 |
2 | |
建築―外と内からの日本― | 鈴木博之 |
音楽―近代音楽の誕生とジャポニスム― | 鶴園紫磯子 |
写真―フランス、イギリスそしてアメリカの場合― | 横江文憲 |
モード―パリ・モードとジャポニスム― | 深井晃子 |
ジャポニスムを考える
ジャポニスム学会編 思文閣出版
2022年4月
ISBN 978-4-7842-2034-2
3,520円
352頁
A5判
「編集後記」より
ジャポニスムとは、19世紀後半にフランス近代画家等が積極的に日本趣味や美意識を取り入れた文化現象を主に指してきたが、近年では「世界に向けて発信された日本文化」といった、越境的な時空で展開する日本文化表象および受容を広く示す言葉として流通し始めている。近代美術史や近代文学研究のサブフィールドとして捉えられてきたジャポニスム的な現象や表現、そしてその評価と批評には、今日のグローバルな文化における「日本」の座標を理解する有益な手がかりが多く含まれている。
本書の狙いは、日本の外からあるいは日本の外を意識してイメージされた「日本文化」を研究する問題点と可能性を、ジャポニスム研究をリードする学者らが提起することにある。
序・ジャポニスムを考える | 高木陽子・村井則子 |
1 ジャポニスム研究のはじまり | |
ジャポニスム研究の展開―斜かいから眺めた回顧 | 稲賀繁美 |
西洋美術史におけるジャポニスムの周縁化について | グレッグ・トーマス |
近代日本における美術史上の「ジャポニスム」への認識 | 南明日香 |
日本人にとってのジャポニスム―彼らはそれをどう受け入れたか | 馬渕明子 |
2 ジャポニスムの主体としての日本 | |
もうひとつの博物館としての農商務省商品陳列館―殖産興業とジャポニスム | 石井元章 |
日本人がつくったジャポニスム・イメージ―一九三〇年代の国際観光局のポスターから見えてくること | 木田拓也 |
ジャポニスムから「日本主義」へ―野口米次郎の浮世絵論と浮世絵詩を中心に | 中地幸 |
3 ジャポニスム研究の越境性 | |
エルネスト・シェノーの美術批評再考─英仏文芸交流からジャポニスムへ | ソフィー・バッシュ |
朝顔をめぐる英語圏のジャポニスム―ガーデニングから禅まで | 橋本順光 |
Mousmé からshojoへ―フランスメディアにおいて構築、「継承」される未熟なかわいい日本女性像 | 高馬京子 |
4 現代とジャポニスム研究 | |
拡散するジャポニスム、模倣される《ラ・ジャポネーズ》―日米比較から見えること | 村井則子 |
ジャポニスム研究のレンズでみる現代―グローバル化する着物を事例に | 高木陽子 |
あとがき | 藤原貞朗 |
アンケート ジャポニスムとはなにか? |